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  • 2024年6月25日

当クリニックの院内報「GYC通信Vol.16」を発行しました。今回は「糖尿病性腎症の食事」です。是非ご覧ください。


糖尿病性腎症の食事


●食事療法

腎症進展の予防には、肥満の是正、禁煙とともに、厳密な血糖、血圧、脂質の管理が重要とされます。また、糖尿病性腎症は表1 に示すとおり、病期別に食事内容を変化させる必要があります。



表1. 糖尿病性腎症病期別の栄養基準

日本糖尿病学会糖尿病性腎症合同委員会資料より一部改変


腎症1 期、2 期

・たんぱく質は総摂取カロリーの20%以下に抑える

・高血圧を合併している方は食塩を6g/日未満に制限


腎症3 期、4 期

・高血圧の有無に関わらず食塩を6g/日未満に制限

・たんぱく質摂取量は0.6~1.0g/kg 標準体重/日に制限

・腎症4 期では十分なエネルギーを摂取する

※たんぱく質の摂取を制限しエネルギーも不足すると、筋肉が分解され

アミノ酸が体内で増加し、腎臓に負担をかけることになります。そのため、

たんぱく質摂取を制限する時は十分なエネルギーの確保が重要です。


腎症5 期

・厳しいたんぱく質制限は不要となるが、厳格な食塩・水分管理が必要


●たんぱく質の種類に注意を

たんぱく質には動物性たんぱく質植物性たんぱく質があります。



<動物性たんぱく質>

メリット

・良質なたんぱく質で重要な栄養素を多く含む

・筋力低下の予防、改善が期待できる

・乳製品(特に低脂肪乳製品)が腎機能低下に保護的に働く可能性あ


デメリット

・飽和脂肪酸やコレステロールが多く動脈硬化、慢性腎臓病(CKD)、死亡リスク増加の報告あり

・腎機能低下リスクの高いリンの吸収率が高い(特に加工肉)

・尿毒性物質の産生を増加させる(特に赤肉)


<植物性たんぱく質>

メリット

・抗酸化力あり

・腎保護作用が期待できる

・摂取量が多いほど腎機能低下を遅らせる報告あり


デメリット

・不足しているアミノ酸がある

・栄養阻害因子を含むため吸収効率が劣る


植物性の割合を6 割以上に増やすことを勧めるデータ等も

ありますが、一致した意見は得られていません。

糖尿病性腎症を含む血管病を合併している方は

動・植物性たんぱく質の摂取を1:1 にしましょう。


カリウムの摂取を減らすコツ

カリウムは、生野菜や果物に多く含まれるミネラルで、体内のカリウムが多すぎると不整脈や心不全が起きやすくなります。


日本食品標準成分表2020 年版(八訂)
日本食品標準成分表2020 年版(八訂)

水やお湯に溶ける性質を持っているため野菜等は小さく切って「茹でこぼし」「流水にさらす」等で1/5~1/2 に減らすことができます。


参照:国立循環器病研究センター
参照:国立循環器病研究センター

 

腎機能検査を知ろう


◎腎臓の機能を示す検査

●eGFR(推定糸球体濾過量)

・腎臓の濾過能力を示す指標

・CKD(慢性腎臓病)/ 糖尿病性腎症の診断や、重症度分類に用いられる

・血清クレアチニン・年齢・性別等から算出

・腎機能低下で低値


●尿中アルブミン定量(TIA 法)

・糖尿病性腎症の早期発見に有効な検査

・試験紙の定性検査より感度が高い

・CKD / 糖尿病性腎症の診断や、重症度分類に用いられる

・腎機能低下で高値


CKD の重症度分類


●血清クレアチニン

・筋肉に含まれるタンパク質の老廃物

・筋肉量や運動の影響を受ける

・食事の影響を受けにくい

・腎機能低下で高値



●シスタチンC

・血液中に含まれるタンパク質の一種

・早期の腎機能障害のマーカー

・甲状腺機能の影響を受ける

・食事、筋肉量、年齢の影響を受けない

・腎機能低下で高値


●BUN(尿素窒素)

・タンパク質が利用された後にできる老廃物

・タンパク質の摂り過ぎ、脱水、発熱、消化管からの出血、甲状腺機能亢進症などの影響を受ける

・腎機能低下で高値


参照:一般社団法人全国腎臓病協議会、一般社団法人日本腎臓学会


◎透析導入原因第1位は糖尿病性腎症


※一般社団法人日本透析医学会2022 年透析導入患者の動態一部改変
※一般社団法人日本透析医学会2022 年透析導入患者の動態一部改変

様々な疾患が原因で透析になる方がいますが、その中でも糖尿病性腎症が原因の方が極めて多く、40%を超えています※。


生命維持に不可欠な半面、下記のような時間的、肉体的、金銭的なデメリットがあります。


・大多数の方が週2-3 回治療が必要

・医療費として年間約480 万円(本人負担12 万円)

・合併症(血管病、感染症、血圧異常等)の増加

・糖尿病患者は生命予後が不良


透析導入を未然に防ぐためには腎症の早期発見、早期治療により、病気の進行を遅らせることが重要です。

参照:一般社団法人全国腎臓病協議会、一般社団法人日本透析医学会


◎早期発見のカギとは!?

腎症は、自覚症状なく徐々に進行していきます。尿タンパクが陽性となったり、むくみを自覚するようになる頃には腎症はかなり進行している状態です。病気の進行を遅らせ、透析を回避するためには、出来るだけ早期に腎症を発見する必要があります。

早期の腎症を発見するには、


・微量アルブミン尿

・eGFR


この二つの定期的な検査が有効です。


腎症の発症は、年齢や糖尿病の罹病期間、血糖コントロールの良し悪しなどに影響され、また自覚症状も乏しく、検査なしで診断するのは困難です。


糖尿病の方は腎症を疑い、血糖コントロールを良好に保っている方でも定期的に検査を受けましょう。

  • 2024年2月26日

更新日:2月13日

当クリニックの院内報「GYC通信Vol.15」を発行しました。今回は「知っておこう!人工甘味料の新常識!」です。是非ご覧ください。


知っておこう!人工甘味料の新常識


●人工甘味料とは(図1)

人工甘味料とは、化学合成によって人工的に作られた甘味料のことで、糖アルコール合成甘味料が該当します。食品に添加する際には、砂糖の甘さに近づけるために複数の甘味料を併用することがほとんどです。それぞれの甘味料に、特徴や、得意分野があるため、様々な組み合わせで使用されています。






人工甘味料は安く手に入り、低糖質・低カロリーですが、近年、健康被害を示唆する論文が報告されています。


人工甘味料による糖代謝異常のメカニズム

通常は砂糖の摂取により血糖値が上昇します。一方、ほとんどの人工甘味料は糖質を含まないため、血糖値の上昇が起こりません。肥満や糖尿病の予防に有用と考えられていましたが、本来の糖代謝システムが乱れ、脳の摂食中枢や摂食中枢ホルモンに異常が起こり、その結果太りやすくなると言われています。さらには、人工甘味料の強い甘味に慣れてしまい、甘味に対する感覚が鈍くなり、より甘い糖質を摂取してしまう可能性もあります。



WHO(世界保健機構)の勧告

人工甘味料が低カロリー・低糖質のため、たくさん使用しても問題ないと思われるかもしれませんが、使用量使用頻度には注意が必要です。2023/5/18 にWHO より、体重のコントロールや心血管・脳血管病等のリスクを低くするために、一部の人工甘味料や天然甘味料を使用しないよう勧告が出ました。つまり、上記の甘味料の長期的な使用は、成人および小児の体脂肪を減らす上で利益をもたらさないばかりか、成人の2 型糖尿病、心血管疾患、死亡率の増加などの影響が出るかもしれないということです。


※WHOより引用 ※日本WHO協会一部改変
※WHOより引用 ※日本WHO協会一部改変

意外な人工甘味料含有商品



良かれと思って選んでいる食品の中にも人工甘味料が含まれていることがあります。


人工甘味料が含まれているものの摂取は...


1日1本(個)まで!!

毎日は控えましょう。

(どうしても甘いものが欲しい時のおやつなど



  • 2023年8月20日

更新日:2月13日

当クリニックの院内報「GYC通信Vol.14」を発行しました。今回は「注意!糖尿病と熱中症!」です。是非ご覧ください。



注意!糖尿病と熱中症!


酷暑が続いておりますが、この時期特に気を付けたいのが、「熱中症」です。今年の夏は、全国的に平年より暑く、残暑も厳しくなることが予想されており、より一層、熱中症への警戒が必要です。外出時だけでなく、室内でも熱中症にかかるリスクがあることにも注意しましょう。



熱中症患者のおよそ半数は65歳以上の高齢者です。

高齢者は暑さや喉の渇きを感じにくく、暑さに対する調整機能が低下しているため、特に注意が必要です。


こまめに水分補給を

発汗時には、水分と塩分が多く失われます。そして脱水になると血流が悪くなり、熱を逃がすことができなくなります。また、筋肉や脳、臓器への血流も低下するため、意識を失ったり、臓器の機能低下などの体の不調をきたし、熱中症を引き起こします。喉の渇きを感じなくてもこまめに補給しましょう。


注意点

大量の発汗時に水だけを飲んでいると、体内に吸収されにくいだけでなく、体液が薄まることにより、水中毒とも呼ばれている低ナトリウム血症を起こす危険性があります。軽度では

無症状な場合もありますが、重症になると昏睡や死亡のリスクもあります。商品の表示をよく読み、日常生活での水分補給と、発汗時の水分補給とで、使い分けをしましょう。


※大塚製薬 効率的な水分補給
※大塚製薬 効率的な水分補給

スポーツドリンクと経口補水液の違い

発汗時によく使用される2つの飲料について違いを理解しましょう。


★糖質量と食塩相当量の比較

角砂糖3.3g/個


まとめ


・商品によって量に差はありますが、スポーツドリンクには糖質量が多く、角砂糖9個分を含みます。運動などによる発汗によって体から失われる水分・ミネラルを補給できますが、飲みすぎると糖質の過剰摂取に繋がります。


・経口補水液は、お味噌汁1杯分、梅干し中1個分の食塩相当量を含みます。病者用食品であり、脱水時の使用を目的に作られているため常用は控えましょう。


・普段の生活ではスポーツドリンクや経口補水液ではなく、水かお茶をこまめに摂取するよう心がけましょう。



 

糖尿病の方は熱中症になりやすい!?

糖尿病の方が熱中症に特に注意しなければならない理由は、高血糖による脱水症状です。糖尿病で血液中の糖が多くなり過ぎると、腎臓は糖を多量の水分と一緒に尿として排出するようになり、尿の量や回数が増えます。さらに、長年血糖コントロールが悪く神経障害が起こっている方は、暑いときでも汗をかきにくくなって体温調節機能が低下していることがあります。


熱中症予防のポイント

・こまめに、のどが渇く前の水分補給

・利尿作用のあるコーヒーや緑茶、アルコール飲料ではなく、水や麦茶などのノンカフェイン飲料がおすすめ

・糖質の多いスポーツドリンクでの水分補給は×

・塩あめは大量に汗をかいた時のみ

・1日1-2 Lの水分補給(心・腎機能低下の方は除く)

・起床時、入浴前後、就寝前に水分補給

熱中症環境保健マニュアル2018より改変



心血管病に注意!


脳梗塞は夏に最も起こりやすいというデータがあります(図1)。糖尿病の方は脳梗塞になりやすく、非糖尿病者の2~4倍高頻度です。また、糖尿病患者の半数が高血圧を合併していることから、ラクナ梗塞という細い血管が詰まることで起こる脳梗塞が多発する傾向にあります。

(糖尿病治療ガイド2020-2021)




脱水により血液の濃度が上昇し、血栓ができやすくなったり、血管が潰れ、詰まりやすくなることが原因として挙げられます。脱水症状にならないよう、汗をかいていなくても、こまめな水分補給を心がけましょう。



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